
射出成形における不良に「フローマーク」と「ジェッティング」と呼ばれるものがあります。
フローマークとは成型品表面にでるいろいろな形の流れ模様のことで典型的なものはゲートを中心にしたものが多いが、ほかにも成型品の流動先端部や平面成形品の表面に大きな面積でうねり模様もでる場合もあります。
主な原因はキャビティ内に最初に流入した材料の冷却速度が速すぎて、次に流れ込んでくる材料との間に境界が出来て発生するパターンと流動バランスが崩れて生じるパターンがあります。
ジェッティングは成型品の表面に、ゲートの箇所から”みみず”がはった跡のような模様がでる現象が多く、サイドゲートの製品に起こり易いです。
原因としては充填初期にノズルから出て、ゲル化した樹脂が金型面に当たって固化し、後から入ってきた溶解材料より流されてことによって起きる場合がほとんどです。
ではなぜこの全く異なる2つの不良を同じ項目として分類したのかというと、
フローマークとジェッティング の発生の仕組みが密接に関係しているからです。
どちらも成型品の表面に溶解樹脂が流れた跡の模様が残ってしまう現象です。
つまり、模様は違うが、どちらも樹脂が流れた跡である。
フローマークとジェッティングの関係は主に射出速度に影響していて、
遅いとフローマーク、速いとジェッティングになる傾向がある。
(図で表すと下記のようになる。)

これは射出速度の違いにより、
樹脂の流れ方、特にフローフロント(流動先端部)の流れ方に違いが生まれるためである。
フローフロントとは…
流れている樹脂の一番先端の部分のことである。
フローマークとジェッティングでは樹脂の流れにどのような違いがあるのか、
その違いを理解するのは、樹脂が金型の中でどのように流れているのかを理解する必要がある。
樹脂流動は一般的に金型面との滑りによって流れると勘違いされがちですが、実際には流れの中心から金型面へ噴き出す様に流れていきます。
(これをファウンテンフローといいます。)

ファウンテンフローして金型面に接した樹脂は、金型に急冷され固化層(スキン層) を形成し、そして固化層(スキン層)は成長していきます。
流れの速度は中心付近が最も速く、金型面及び固化層に近づくにつれ遅くなります。
フローマーク
一般的な樹脂の流動を図に表わすと下記のように固化層(スキン層)
と熔融樹脂、そしてフローフトントに分かれる。この場合、フローフロントは
固化層と熔融樹脂の間=固まりかけの樹脂ということになる。

先ほど説明したように樹脂はフローフロント(固まりかけの樹脂)を後ろから来る熔融樹脂が突き破るようなイメージで流れています。
射出速度が遅いと、表面の固まりかけたフローフロントの層がより固化する方向になってしまうので、下記の絵のような流れになり、結果的にフローマークが発生します。

つまり樹脂の固化が進まないうちに射出することでフローマークを防ぐことができます。
仮に速度がさらに遅くなれば、フローフロントは完全に固化し樹脂が回らなくなっていきます。
ちなみにフローマークはゲート付近に発生することが多いですが、
これはゲート通過後に樹脂の流動速度が遅くなるためです。
ではなぜゲートを過ぎると遅くなるのでしょうか。それは樹脂の流れを断面的に考えると、わかります。

厳密には実際の流動とは異なりますが、一定の圧力で射出した際に、仮にランナー部を流れる樹脂速度を
普通とした場合、ランナーの半分の流路しかないゲート部の速度は速くなります。
しかし製品部は流路がランナー部の倍なので、速度は遅くなります。
これはホースから流れる水と同じで、同じだけ蛇口を捻っても、ホースの径を
小さくすれば速く流れ、大きくすればゆっくり流れることと同じといえます。
ジェッティング
先ほどでてきたようにジェッティングは射出速度が速いと発生します。
発生箇所的にはゲート口など、極端に流路が広がる場所に発生します。
本来樹脂の流動は金型に張り付きながら、金型の熱による流動抵抗を受けながら広がって流れていきます。
しかし樹脂の流れが速すぎると、流路が広がった瞬間に樹脂が飛び出してしまいます。
これはホースの先端を抑えると水が勢いよく飛び出すのと同じ現象です。

金型に張り付かずに空間に飛び出した樹脂は表面層が空気で冷却され、
薄い固化層を形成してしまいます。この固化層は一度固まっているので
周辺に後から樹脂が回ってきても跡が残ってしまいます。
その固化層の跡がジェッティングです。
速度がゆっくりと流れるように成形してあげればジェッティングは改善します。
仮に成型機の射出速度などの設定が同じでも、
ゲートの断面積が大きくなってくれば、ジェッティングは改善されます。
しかしながら外観上の問題やゲート処理が難しくなったりなど弊害もあるので、
ジェッティングが発生するからゲート断面積を大きくすればいいというわけではありません。
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